神奈川工科大学附属図書館
 
サイトマップ大学ウェブサイトGoogle検索
 
kapli
 
図書館について施設を予約する探す調べるお知らせマイページ
 
 


 図書館Café Vol.7 No.2 発行日:2018年3月31日

 発行所:神奈川工科大学附属図書館
 図書館長:小川 喜道 編集委員長:安本 匡佑
 編集委員:今井 健一郎・安部 惠一・小澤 秀夫・渡邉 怜・摺淵 亜希子

 
 

学生時代のこの一冊

スタンダール著 桑原武夫訳 
『赤と黒(上・下)』

基礎・教養教育センター 教授
尾崎 正延


 1986年、フランスの学生による五月革命の影響で日本にも学園紛争の嵐が吹き荒れていた。幸か不幸か大学は閉鎖され、授業は1年間休講となった。図書館で古典、名著に接することができ、至福の時間を持てた。当時流行のサルトルや、ドストエフスキー、ロレンス、スタインベック、フロベール、ボードレール、エリュアール等のさまざまな作品に触れたが、サマセット・モームが「世界10大小説」の一つとしたスタンダールの『赤と黒』(Le Rouge et le Noir)で覚醒し、主人公ジュリアン・ソレルの自尊心の高さに魂を揺さぶられた。リベラルな視点に立ち、クリティカルな精神構造、権威への盲目的追従に陥らない姿勢は、そこから養われたのであろう。

『赤と黒(上・下)』


スタンダール作 桑原武夫 生島遼一訳 岩波書店 1958

配置場所:2階書架 請求記号:091||I||S
所蔵詳細:
http://kw.kait.jp/opac/BB01252830

 

- ひとくちメモ -

スタンダール Stendhal [1783―1842]
フランスの小説家。本名アンリ・ベールHenri Beyle。19世紀前半のフランスの小説家としてバルザックと並び称されるが、ほかに 文芸評論、旅行記、評伝、自伝などにも手を染めている。文筆活動以外にも、ナポレオン時代の軍人、軍属、また七月革命以後の外交官の経歴があり、周知の数多い恋愛遍歴に彩られた生涯はきわめて波瀾(はらん)に富む。
出典:日本大百科全書/JapanKnowledge(WorldCat Discovery Servicesリンク)
 



 読書ノートの勧め

図書館長
ロボット・メカトロニクス学科 教授
小川 喜道


 私の学生時代、それは50年も前のことになります。読書家ではありませんが、時に悩み、時に迷った時、本を手にしたくなったものです。そして、その読後感を大学ノートに書き込んでいました。久しぶりにロッカーの奥から取り出すと、埃っぽい紙の匂いがデスクの周りを包みました(写真)。
数えてみると、116冊分の感想が書かれていました。その中で、私の特に印象に残っている2冊をここに紹介します。
 2017年7月に105歳で亡くなられた日野原重明先生の『病む心とからだ』(1958、日本YMCA同盟出版部、今から60年前の出版)、これは苦しみから抜け出すヒントを与えてくれたものです。「普通の人の夢見る幸福は、貧乏により、または病気にかかることによってたちまち不幸と変わり、その意味で幸福ははかないものであるが、ヨブやヘレン・ケラーの心の幸福は、いかなる逆境にも乱されない幸福、心の平安である。」(p.34)と。その時、もっとも大切なのは心のありようだ、と自らを奮い立たせたものです。
また、ドイツの作家ヘルマン・ヘッセの『放浪』(1953、高橋健二訳、人文書院、この本はヘッセ直筆の水彩絵と紀行的随想からなる)は、彼が放浪しつつも故郷にあこがれ、相反する作用の間を生きているようで、実は、今という現実を豊かなものにしようとしています。「・・・私たちにとって愛そのもので充分なのだ。ちょうど、さすらいのうちに目的地を求めず、さすらいそのものの楽しみを、途上にあることを求めるように。」(p.32)
 学生時代とは、勉学、就職、友人関係などさまざまなストレスやその不安定感の中にあって自己を見失いがちな中、つまりは「放浪」の中、結局はその過程に身を置いて自らを真剣に見つめること、しかも自己愛、自尊心をもって生きることを大切にしてほしいと学生の皆さんには伝えたい。思いがけず、埃臭い読書ノートの中から、今の自分を振り返る文章をたくさん見つけ出しました。今やスマホやパソコンで「読書メモ」を残すことができます。それは、読書を通して自らの生きている証を残す作業とも言えます。ぜひ、「読書ノート」として青春の記録を残してください。それを10年後、30年後、50年後に読み返すと、昔を蘇らせるばかりではなく、今を、その時を、より豊かにすることができるはずです。

『病む心とからだ』


日野原重明著 日本YMCA同盟出版部 1958
所蔵詳細:
http://kw.kait.jp/opac/NII/BN03617068


『ロスハルデ ; クヌルプ ; 放浪 ; 物語集』


ヘルマン・ヘッセ著 日本ヘルマン・ヘッセ友の会・研究会編・訳
臨川書店 2005
所蔵詳細:
http://kw.kait.jp/opac/NII/BA74851664

 

先生おすすめの一冊①

夏目漱石著『三四郎』

情報ネットワーク・コミュニケーション学科 准教授
岡本 学


 私が若いころには、リア充/非リアなんていう区分けはなかった。それはそれで助かったと思う。そんな区分けに巻き込まれたら、と考えただけで冷や汗が出る。面倒でならない。
 リア充とは、「リアルが充実」していることを指す若者言葉だが、じゃあなにをもってして「リアルが充実しているか」という問題がある。全国大会を目指して汗を流している運動部とか、バックパッカーで世界中を回っている人間なんてまさに「充実している」感じがするのだが、そういった連中をあまり「リア充」とは呼ばない。どうやらたいていは「異性の特別な相手がいるかどうか」を「充実」と言うようなのだ。草食の時代なんて呼ばれたって結局はそんなもんだ。
 だが驚くなかれ、あの夏目漱石でさえ、「リア充」をそう考えていたようだから面白い。夏目漱石が活躍したのは百年も前である。漱石は小説「三四郎」の主人公の青年を世の中に泳がせ、様々な事件にめぐり合わせる。汽車への飛び込み自殺との遭遇、学生運動、科学技術と芸術――漱石は主人公を田舎・熊本から出てきた青年とすることで、新たな世界感に目覚めていく人間を描写した。そして漱石が青年の青春を突き通す事件の根幹においたのは「女」、しかも謎の多い女であった。「三四郎」は夏目漱石が書いたリア充小説である。
 その冒頭、いきなり謎の女が登場する。この部分だけでもいいので読んでほしいのだが、三四郎は東京行きの列車の中で見知らぬ女と話す仲になり、何かの縁だからと同じ宿に泊まろうとする。だが、宿の人間が夫婦と間違えて、ひとつの部屋に二人を通してしまう。果たして三四郎は・・・
 あの堅物そうな漱石がこんなものを書いていたかと思うとほほえましくある。いや、あの漱石ですら、この種の煩悩こそが「生きるリアルである」ことからは逃げられなかったのか・・・

『三四郎』


夏目漱石著 岩波書店 1979
配置場所:2階書架 請求記号:091||I||N.S
所蔵詳細:
http://kw.kait.jp/opac/BB00049004

 

先生おすすめの一冊②

山名正夫著
『最後の30秒―羽田沖全日空機墜落事故の調査と研究』

機械工学科 教授
木村 茂雄


 本書は書名にあるように、全日空機(現在のANA)が1966年に羽田沖に墜落した原因を、著者が独自に究明した結果の報告です。墜落事故がどんなに複雑な過程を経たとしても、そこには明快な工学的論理が存在するとの著者の信念が全編を通して貫かれています。残された僅かな情報から仮説を立て、それを実験で検証する。これを繰り返すことで、最初に何が起こり、どのように進展し、最後に墜落するまでを明らかにします。内容は高度に工学的ですが、いわゆる教科書的ではありません。むしろ、質の高い推理小説を読んでいるようにさえ感じます。難事件の解決をクールに説明するホームズに著者が重なるのです。
 本書に書かれた実験の多くは大学の1研究室で行われました。限られた予算と人員、そして施設であっても素晴らしい結果を生み出せることを示してくれます。皆さんに本書を薦めたい理由がここにあります。 
 なお、本書に関連した本が「マッハの恐怖(柳田邦男著)」です。こちらはノンフィクション作品で、同年に連続した航空機事故を扱っています。事故全体を俯瞰することができるので本書を読む際の理解を助けますし、何故著者が独自で動かねばならなかったかも分かります。いずれも絶版ですが、本学図書館に所蔵されています。

『最後の30秒―羽田沖全日空機墜落事故の調査と研究』


山名正夫著 朝日新聞社 1972
配置場所:2階書架 請求記号:687.7||Y
所蔵詳細:
http://kw.kait.jp/opac/BB00026935


『マッハの恐怖 7版 : 連続ジェット機事故を追って』


柳田邦男著 7版 フジ出版社 1972
配置場所:2階書架 請求記号:687.7||Y
所蔵詳細:
http://kw.kait.jp/opac/BB00050767

 

学生のおすすめ本

エレナ・ポーター著 木村由利子訳
『新訳少女ポリアンナ』




 プラス思考という言葉があります。私自身はマイナスに考えてしまうことが多々あり、失敗することを考えると逃げ出したいと思ってしまいます。
 この本は、11歳のポリアンナという少女がとある理由で新しい街へ来るところから始まります。彼女は「嬉しい探しゲーム」といって、辛いことや悲しいことが起こったとき、その中から少しでも「嬉しい」を見付けるということをしています。街の人々は、始め彼女を煙たがっていましたが、彼女と接していくにつれ彼女への感じ方が良い方向へ変わっていくのです。
 私も街の人々と同じく、始めはポリアンナに共感できませんでした。ところが次第に彼女を好きになっていきました。何事にも恐れず、物事の中に嬉しさを見つけ、生き生きとしている姿に惹かれたのだと思います。この本を読んでから、私も「嬉しい探しゲーム」を意識しています。まだまだ彼女には及びませんが、この意識を持ち続けたいと思います。
 これから新たなことに挑戦しようとしている人や、私のように卒業研究と就職活動を控えている人に是非読んでいただきたい本です。不安の中にも「嬉しい」はあるはずです。

『新訳少女ポリアンナ』


エレナ・ポーター著 木村由利子訳 KADOKAWA 2013
配置場所:1階文庫書架 請求記号:B933||P
所蔵詳細:
http://kw.kait.jp/opac/BB01086451

 

学生ひとくちコラム

ニュージーランド異文化研修



 皆さんは入国審査を受けたことがありますか。私は今回のニュージーランド異文化研修が初めての経験でした。もちろん英会話も初心者だったので、片言の英語と身振りで何とか乗り切りました。これが私の異国体験の幕開けです。滞在中の主な移動手段はバスだったのですが、大学のあるオークランドのバスには車内アナウンスがありません。目的のバス停で降りる事が出来るのか少し不安になる…。日本との小さな違いを感じるのも異文化研修の醍醐味です。
 そんな私から、ちょっと便利だったものを紹介します。それは日本から持参したWi-Fiルーターです。使い慣れたネット環境があればGoogle Mapsで
位置情報を確認することも出来るし、困った時にも安心感があります。 初めての海外、不安な方はWi-Fiルーターを持っていくと良いですよ。 
 オークランドは自然豊かで治安も良い都市です。ぜひ皆さんも異文化体験してみませんか?
 

海外旅行記

クロアチア

ホームエレクトロニクス開発学科 准教授
山崎 洋一


 国際会議といえば、研究成果を世界に発信する機会であり、また世界中の研究、人および文化を知る機会でもある。今年度は、諸学生、先生方のご協力もあり、クロアチアのザグレブ、名古屋、北京、ラスベガスでの国際会議に採択された。中でもクロアチアは初めて行く国で、会議会場の周辺に観光名所となる教会や市場などがあり、朝に散策するだけでも有意義に過ごすことができた。
 海外出張の必携品といえば、現地の移動手段を把握するためのガイドブックや電源コンセントの変換コネクタはもとより、 日本らしい小物を用意しておくと、知り合って仲良くなった海外研究者や現地の人への手土産として役立つ。 そしてPCやスマホを使えないときのために、少なくとも本を一冊は持って行く。 持ち歩きやすく、長い移動にも耐えられるものということで、読むのに時間がかかる古典の文庫を持っていくことが多い。
 クロアチア出張の際は、
『代表的日本人』 (内村鑑三著 鈴木範久 翻訳岩波文庫)を携帯した。『代表的日本人』は、新渡戸稲造の『武士道』、岡倉天心の『茶の本』と並び、明治時代に日本文化を世界に向けて英語で発信した書籍として名高い。キリスト者である内村鑑三が世界の文化、歴史と照らし合わせながら、日本の長所を示すにふさわしい代表的日本人として西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮の五人を紹介している。本書の目的を誤解なく示すには、序文から次の一文を引用するのがふさわしいだろう。 「わが国民の持つ長所――私どもにありがちな無批判な忠誠心や血なまぐさい愛国心とは別のもの――を外の世界に知らせる一助となることが、おそらく外国語による私の最後の書物なる本書の目的であります。」  
 私が本書をはじめて手にしたのは学部生の頃であり、ちょうどロボット分野を本格的に学びはじめたときであった。文明開化から四半世紀が過ぎようという時代に、日本という国を西洋に劣らぬ道徳、政治、行政、教育、そして信仰心を持った国として世界に発信しようという著者の使命感に、これから世界をリードしようという分野を学ぶ身として、そこはかとない共感を覚えた。残念ながらこの十数年で、日本はロボット、AIをはじめとする先端的な
工学分野で世界に遅れを取るようになってしまったと実感している。今、本書をあらためて読み直してみると、これまで以上に強く共感するものがあり、本学での研究成果を日本発の技術として世界に発信していく使命感をひしひしと感じずにはいられない。

※1聖母被昇天大聖堂、※2ドラツ青果市場、※3聖マルコ教会は
 隣接しており20分も散歩すればすべて回ることができる。

『代表的日本人』


内村鑑三著 鈴木俊郎譯 岩波書店 1941(岩波文庫)
配置場所:2階書架 請求記号:091||I||U.K
所蔵詳細:
http://kw.kait.jp/opac/BB01252831